1、概要・定義
変形性股関節症は、関節軟骨の変性、摩耗により関節の破壊が生じ、これに対する反応性の骨増殖(骨硬化)を特徴とする疾患で、原疾患が明かでない一次性股関節症と、何らかの疾患に続発する二次性股関節症に分類せきる。一次性股関節症はわが国においてしに頻度はすくなく、15%前後とされている。二次性股関節症の原因には多くのものがあるが、わが国では先天股脱、亜脱臼、臼蓋形成不全によるいわゆる亜脱臼性(脱臼性)股関節症が多く、全股関節症の約80%を占める。
2、原因
一次性のもの・・・関節軟骨内におけるプロテオグリカンあるいはコラーゲンの質的変化あるいは加齢による老化、その他遺伝的要素やホルモンの影響が考えられている。
二次性のもの・・・先天性股関節脱臼・外傷・ぺルテス病・大腿骨頭すべり症
*日本人は臼蓋形成不全より派生するものが多く、臼蓋や大腿骨の変形を伴いやすい。
3、経過(進行度)
1、前関股関節症・・・
やや跛行がみられ、長時間だと疲労感があり、疼痛は時々出現するが、安静で減少する。X線学的には臼蓋形成不全があり、骨頭が骨性臼蓋で十分に覆われていない。しかし、関節裂隙は十分保たれており骨硬化症、嚢腫形成などの変化はみられず、関節可動域も十分保たれている。
2、初期股関節症・・・
持続的な疼痛が出現し、日常的にわずか障害が出てくる。X線学的には関節裂隙のわずかな狭小化、荷重域の骨硬化像がみられる。骨棘はみとめられないが、やや骨頭の外方移動がみられる。
3、進行期股関節症・・・
さらに疼痛の持続が出現し、跛行、内転拘縮、筋萎縮、筋力低下がみられる。X線学的には、骨頭周辺、臼蓋底部に骨棘形成がみられ、骨頭は扁平化し関節裂隙は明らかに狭小化している。関節不適合が著明に存在し荷重面が減少する。それに伴い、臼蓋の骨硬化像や嚢腫形成などの関節症変形が進行する。
4、末期股関節症・・・
安静時にも疼痛が出現し、股関節運動が著明に制限されるようになり(特に、外転、内外旋)それに伴って、日常生活は著しく制限される。X線学的には関節裂隙の消失、著しい骨硬化像、多数の嚢腫形成、骨頭の著明な変形が認められる。関節適合性が失われ骨頭内側の骨棘の成長により、二重臼底像が完成し寛骨臼はさらに浅くなり骨頭の外上方化が進む。したがって、内転拘縮も手伝って患肢の短縮を自覚するようになる。
4、症状
鼡径部、大腿前面の鈍痛で始まる。疼痛は緩徐名進行性である。痛みは運動時痛・荷重時痛で安静時は軽減または消失する。疼痛はときに膝部へまで放散してくる。跛行や股関節運動制限がみられる。運動制限は内転・外転・回旋制限で屈曲は比較的保たれる。病勢の進行とともに内転、内旋、屈曲拘縮の異常肢位をとるようにする。(屈曲・内転・外旋位)股関節内圧が高くなると痛みを生じるため、最終的には骨棘が前外側にでる。(屈曲・内転・内旋位あるいは外旋位)
5、治療
理学療法
・筋力増強訓練
股関節の安定性を確実にするため、中殿筋を中心に股関節周囲筋および、膝関節周囲筋力増強訓練を行う。
・関節可動域訓練
整形外科的治療法 ・臼蓋を形成する術
・転子間骨切り術
・筋解離術
・股関節固定術、
・人工関節置換術
6、評価項目
⑴ X線評価とアライメント評価
Ⅰ-術前股関節の変形を評価する。
① 変形性股関節症のstageが前・初期・進行期・末期か
② 頚体角が外反か内反か
③ 股関節が高位脱臼・亜脱臼か
Ⅱ-全身のX線から評価する。
① 脊柱の側弯、骨盤の高さ、膝の外反・内反、脚長差
② 足部の外反母趾、回内足、凸足
③ ①、②を非手術側についても評価する。
Ⅲ-立位アライメントの評価を術後股関節部分荷重が許可された時点で行う。
① 足位・前足部の回内外、後足部の内外反、膝の内外反、骨盤の高さ、回旋、側方移動に関して評価する。
② 脊柱の側弯、痛みの部分(股関節、腰部、膝、足部)について評価する。
③ 治療を施し全荷重での、歩行時動的場面での大幹、骨盤、股関節の回旋、膝の内外反、足部の形態を評価する。
⑵ 形態測定
Ⅰ-周径
下肢の筋萎縮の左右差、浮腫を評価する。
Ⅱ-下肢長(SMD)
①上前腸骨棘と内果の距離を測定する。
(脚長差の結果においては、靴の補高の参考になる)
②見せかけの脚長差(機能的脚長差)も評価する。
(非荷重位と荷重開始後の骨盤傾斜が違う場合)
Ⅲ-関節可動域(ROM)
屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋
Ⅳ-筋力(MMT)
屈曲、伸展、外転、内転、外旋、内旋
⑶ 疼痛
触診において股関節起因の圧痛の有無を検査する。
部位は、大転子、鼠径部、大腿直筋腱、内転筋腱、仙腸関節、Scarpa三角部
原因は、関節包、関節構成体の短縮。
その他の疼痛に、バネ股、弾撥股(大転子部滑液包炎)による痛みや恥骨結節炎による疼痛が考えられる。
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