目次
1.概念
スポーツ傷害のうち、足関節部が占める割合は10~15%であり、足関節の傷害の中では捻挫が70%前後を占める。足関節捻挫は、競技レベルのスポーツから健康スポーツ、レクリエーションスポーツそして学校体育やクラブ活動、スポーツ少年団の活動などのいずれにおいても起きる。
競技スポーツでは、重症例が多く、また受傷頻度も高いため慢性例が多い。健康スポーツでは過体重や肥満が受傷の誘因となることが多い。
不十分な初期治療のため慢性化したり、安易に復帰して再発し、より重症化する例もみられる。スポーツ傷害としてとらえた場合、足関節の機能を回復させることは勿論、全身的にもコンディションを整え、当初のレベルのスポーツへの復帰が可能となるような治療計画が必要となる。
2.病因・病態・病理
足関節は、脛骨と腓骨からなる果間関節窩に距骨滑車がはまりこんだ状態で安定性を保っている。滑車関節面の横幅は前方が広く、後方が狭いため、足関節背屈位では広い滑車前方が楔状にはまりこみ、脛腓靭帯の緊張により側方の安定性が保たれる。逆に底屈時には不安定で、とくに靭帯や関節面の噛み合わせの緩やかな外距果関節の内転内旋方向に緩みを生じる。そこで、足関節捻挫といえば、ほとんどが内反底屈が強制されたときに起きる足関節の損傷と考えられる。
足関節底屈位で内がえしが起きた場合、まず外側側副靱帯の前距腓靭帯が緊張し、この前距腓靭帯の損傷が起きる。さらに強い力が加わると、関節包を含めて踵腓靭帯が損傷される。前距腓靭帯の損傷形式としては、腓骨または距骨付着部での損傷があるが、治療においては内がえし損傷の一時的支持機構である前距腓靭帯の修復が主眼となる。
3.なぜ前距腓靭帯が損傷されやすいかについて
前距腓靭帯での捻挫は、足関節が底屈、内反を強制されることで起こる。そして、底屈内反が強制されると腓骨が前下方に牽引され、距骨滑車外側面と衝突し、外果内側面が下脛腓関節を離開し、前下腓靭帯が伸張されて痛みを生じる。前距腓靭帯の損傷様式としては、腓骨または距骨付着部での裂離や、中央実質部での断裂がある。内反底屈での捻挫では前距腓靭帯損傷の代償として腓骨筋の腱鞘炎を起こすことがある。 前距腓靭帯は普段は横(水平)に走行しているが、底屈内反すると縱(垂直)に走行するように変わり、それによって横からの衝撃を最も受けやすいためである 。
4.臨床症候
足関節捻挫の分類について、吉田らは下記のように軽症、重症を分類している。その他、一般的な重症度分類も下に示す。
受傷時の状況 | ・軽く捻った ・痛みが軽度 | ・捻った時に音がした ・すぐに立てなかった |
歩行 | ・受傷直後から可能 ・軽い跛行 | ・歩行不能 ・著しい跛行 ・歩行補助杖にての歩行 |
圧痛(外側側副靱帯部で) | ・我慢できる程度 | ・著しく強い疼痛で、瞬間的に足を引っ込 める |
腫脹 | ・ないか、あっても軽度 | ・高度 ・足趾、足底の辺りまで皮下出血あり |
X線検査(前後、側方向) | ・異常なし | ・通常ないが、骨折や関節裂隙の異常に注意 |
ストレスX線診断 | ・距骨(内反)傾斜角測定が可能 なこともある。 ・前方引き出しテスト可能 | ・距骨(内反)傾斜角測定が不能 ・前方引き出しテストは可能なこともある ・関節動揺性の評価は不能で、麻酔下では 可能 |
<その他、靱帯損傷の分類>
状態 | 出血・腫脹・疼痛 | 不安定性 | |
Ⅰ度 | 靭帯線維の小損傷 →前距腓靭帯の線維の一部が引き伸ばされた状態 3~7日で回復 | 軽度 | なし |
Ⅱ度 | 靭帯の部分断裂 →前距腓靱帯の完全断裂と踵腓靱帯の部分断裂 回復には3週間前後からそれ以上 | 明らか (腫れと内出血を 伴う) | あり 軽度~中等度 |
Ⅲ度 | 靭帯の完全断裂 →前距腓靱帯および踵腓靱帯両者の完全断裂外科 手術が必要 | 明らか (足部全体が腫れる) | あり (中等度~重度) |
5.処置について
急性期にはRICE処置を行う。アイスパックや弾性包帯などで腫脹を抑えるのが有効であるが、このときあまり強く圧迫しないよう注意する。挙上は静脈還流を促すために行う。その後、軽症例ではテーピングやサポーターを、重症例にはギプスが処方される。ギプス固定は4~6週間とし、その後のトレーニング中は再発予防用にヒールロックをするテーピングを使用する。ギプス除去後の初期の訓練は、関節可動域の改善と筋力の回復に主眼を置く。部分浴を使って自動運動での関節可動域訓練を開始する。
また、主に背屈の改善を目指して、壁や斜面台を利用してのストレッチングを行う。筋力は、腓骨筋強化のためにゴムバンドを利用しての運動やつま先歩行を行う。水泳、水中歩行は関節可動域や筋力および全身持久力の改善に有効である。
<テーピングについて>
足関節のテーピングの代表的なものを下記に記す。
関節可動域、筋力が健側の75%まで回復したら、バランス訓練や機敏性を得るための訓練を行う。
ウッドボードなどを用いることは筋バランスや筋力の訓練とともに、深部感覚の回復を図る上でも有用である。
その後ジョギングを開始し、ストライドを伸ばすよりもピッチを上げるようにし、速く小さく動くことを習得する。スポーツ競技者はこのころから徐々に復帰していく。
捻挫した足関節を自由に動かし、再捻挫を防ぐことが治療の目的である。荷重して疼痛がなく、関節可動域に痛みなしに全可動域可能となり、運動後にも腫脹が起きなくなることを目安にリハビリテーションを進めていくべきである。
6.引用文献
1.荻島秀男、嶋田智明:カパンディ 関節の生理学Ⅱ.下肢.p.192-193,医歯薬出版
2.高倉義典:下腿と足疾患保存療法.p.38-42,金原出版,1997
3.林浩一郎、井上一ら:新 図説整形外科講座 スポーツ整形外科.p.242-250,メギカルビュー社,2000
捻挫でお困りでしたら、山梨県甲府市にある整骨院信玄へご相談下さい。テーピング、包帯(固定等)も可能です。手技での施術もございます。
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整体信玄(整骨院信玄)の編集部。平成27年10月創業。在籍スタッフ保有国家資格:理学療法士、作業療法士、柔道整復師。山梨県甲府市「甲府和戸店」と甲斐市西八幡にある「甲斐店」。
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